開催日
2005/07/09 2005/08/13 2005/09/10 2005/10/08 2005/11/12

2005/12/10

会津太郎

 

 

台風が終わった朝
澄んだ光が
落ちた緑のイガの
茶色い栗の実に
射し込んでいる

 

宴会が
終わったあとは
途中の蕎麦屋で
のんびりと
ひとり酒

 



石田郁子
(木の花)

この地球は
仮の宿
宇宙こそ
永遠のふるさとだと
小さな身体が思う

 

五感を研げば
いたるところに

天が
高い

 

小春日和の
夕空は
ピンクとブルーの縞模様
気持にも
羽が生える

 

心の叫びが
澱となる
舞い立つ
きっかけは
些細なこと

日傘に隠れて見る
影の濃さに
陽ざしが友達
だった頃を
思う   同点一席

海辺で読んだ
本のページから
砂と一緒に
こぼれ落ちた
光の粒と波の音

君の心に
チューニングして
言葉の奥の
声が
聞きたい  同点一席

通学路の
花水木
枝をくぐったら
茜の葉っぱが
頭をなでた

身に食い込む
母という存在
きっと私は
あなたを選んで
生まれてきたのだろう



菊江 寛
(高望正夢)

税を搾り取る
巧みさを
なぜ浪費を
無くす政策に
活かせないの

私にだけ
白蓮が嘆いた
この地球で
清い色を
いつまで保てようか

解りやすい
哲学の本を
さがしたけれど
買ったのは
温泉宿の本

風の速さで
雲がゆく
鉄塔の上を
仲良しの
季節を作る旅

私のために
一番必要な
私自身の
いのち
凍らせてはいけない 同点三席

折り込み広告が
特上の
ステーキほど
分厚い
師走の第一土曜日



草壁焔太
       

小雀の
願いが
成長して
鷲の欲に
なっていないか  同点三席

 

倉田モコ
     

頬伝う
悲しさよりも
涙に浸り
戦略なのか
勝負あり

茜色の空
続く先
逢いたい人が住む
想う度
心がこわれていく

歯の矯正で
顎の手術の息子
三日月のシャープな顔は
四角い食パン顔
それなりにハンサム 二席



小林美智代

逝った夫を
いたむのか
忘れないというように
つばめが空中を
旋回する

 

打ち上げ花火が
消えたとき
夏の終りと
あなたのいない
現実にかえる

いわし雲が広がり
草原に寝ころんで
空を仰ぐ
地球にいだかれ
宇宙とつながる

ひたすら
見ようとしていた眼を
半眼にしたら

見えなかったものが見える

飛行機ぐもの
おしりについて
空を飛びたい
今迄とちがった
道を歩こう




小久保かね子
(自画像)
 

炎暑の昼下がり
行き交う人の陽炎
目眩、吹き出る汗
ふと振り返った
八月六日

自転車の倒れる音
荒れ狂う風が
悲鳴のような笛を吹く
戦中の記憶が蘇る
台風の夜

野一面埋める
コスモスゆれて
この世のものか
立ちつくす
花となる

曾孫抱く
落とすまいと
手に力
目元酷似
パパの笑顔に涙あり

名栗渓谷
初秋の木々
見渡す谷間
流れやさしく
心象はキャンパス

「何が心残りだったのか?」
先に死んでいった
同期生たちを
向こうに訪ねて
訊いてみたい

政党を選ぶのか?
議員を選ぶのか?
いまだにそこが曖昧のまま
小選挙区比例代表並立制度は
政治家をサラリーマン化した

「後三ヶ月の命です」
と言われたら何もできないが
「後三年の命」なら
どんなことでも出来る
そんな決意で生きていく

人を罠にはめようと
策を巡らす者は
意外にも
仕掛けられた罠に
簡単にはまる

言葉とは
光であり
風であり
香なんだ!
届かないところもある

死を自覚した人に
そうだからこそ
質問してみたい
人生で本当に
大切なことは?


こはる
   

いつも感じていたい
季節の
人の
生きる術の
風を   

 

風刺 怒り 笑い
五行歌が
全てを飲みこんで
私の中に
いる

 



芹川廣信
 

 

やりたいこと
片づけず
持ちつづけ
だから、まだ生きられる
八十路の坂      第一席

一人
また
一人
友人が減る
蒼い空のかなた

 

 

喬城奈緒海
(たかなお)

廃墟のような
通路から
階段を上がれば
白い天使たちの祝宴
ごらん 夏がやってきた 二席

烈しい囃子に合わせて
人が舞う
扇子も舞う
心臓までも舞い踊れ!
桐生八木節まつり

不祥事を知り
歓喜に誇り高く掲げていた
この人差し指を
駒苫の部長に
ひと突きしたい

キアヌが
使っていた
眼鏡に会えると
はしゃぐ私に
甘海老も躍る

飲んで
呑んで
ひたすら飲んで
夜が更けてゆく
久方ぶりの解放感

 

中込加代子
       

白神は
立ちのぼる霧を
肩にかけ
花むこ岩木山の
出迎えを待つ

 

なまい きなこ

「だれだか
わかる?」
母への問い
その答えに
安心する

遺骨を拾った後
残った鉄の塊
足の中に入れていたんだ
重かったよね
父さん

ナス、ぶどう
秋刀魚が
うまい
めざすは、いつも
旬の自分     第二席

わが人生は
自分が主役の
ドラマ
自分と共に
ドラマは終わる

まわりの全てを
頂いて
自分になる
見えないけど
ふくらんでいく

葉を落とし
スリムな自分になる
捨てた物を
肥やしにし伸びる
落ち葉が堆肥となるように 三席

福井昭子
       

程よい
距離をおき
親子ごとに集う
千波湖の
黒鳥と白鳥

 



福島重男

茶畑を走る
軽トラの老夫婦
朝日を浴びて
キラッと光る
ロイヤルルーム  一席

 

 

秋空の雲
かたちを変えて
動いてゆく
ふと我に返る
お茶の音   同点三席

 

三位一体
休みなく
赤青黄色に
ありがとう
信号待ちの交差点

前川みち子
       

目のかすみは
取り返しがつかない
お品書きの二百五十円は
二千五百円だった
金目鯛にかぶりつく 同点一席

 

松本佳世
 

 

人生の
やりなおしが
きけばいいな
修正液を
カラカラとふる

白熊みたいな
大きな犬が
少女とゆるゆる歩く
青い月がびっくりして
ますます冴えた

あなたとしれる
アルバムの書きこみ
「おでん屋だとよ!」
セピア色をしても
まだ私を笑わせる

一、二、三歩で
足をそろえ
杖に手をおき
リハビリの兄は
じっと遠くを見る  一席

三好叙子
       

柵を越え
夜の海がながれこむ
巨岩の洞の
温泉に
身をひたす

 

悠木すみれ

取り消したい失言は
ペンキを
重ね塗りするみたいに
今度は
きれいな色で  二席

父を送り
母を看る
娶らぬ義兄の
花の匂いの
ない暮らし 同点一席

商談交渉は
女性を口説くのと同じさ
と 言う夫に
一番苦手じゃあ・・・
とは言えないでいる

肩が触れたくらいで
そう
怒りなさんな
あなたも私も
百年後にはない命

飛び立つための
風を
待つ心地だ
君と
夢を語りあうとき  同点一席

哀切の
記憶を辿れば
傷痍軍人の
包帯で覆われた下肢と
手風琴の音色

吉川敬子
       

挨拶のように
誰でもが
歌を詠む
そんな平和
夢みたりする

 

吉野比抄子

わたしの
脈動は
思いのリズム
この胸の奥
命あるかぎり  

 

 

センセイの本
ずっと待っていました
奥付の笑顔は
スキです≠ニ告げた
昔のまま

まるで
星の洪水
道に寝ころんで
見渡した
南アルプスの空

 

吉村恒雄

尾瀬沼には水芭蕉
富士山には月見草
夏夜空には花火
心ときめく時には
子供の如く声上げる

彼方から
光と共に
やって来る
生まれたての
爽やかな朝に逢う 三席

迎え火が
空にくゆらぐ
風の盆
父母の顔さえ
まどろむ昔

コスモスの
お花畑で
野菜売る
農夫がくれた
幸せの種   同点三席

窓辺行く
可憐な少女
また一人
制服ゆれる
秋の通学路

うらぶれた
小さな塾の
片隅で
草に埋もれてる
あすなろの木



れっどようこ
       

コスモスの
茎の苦さに
藍色の
暖簾が咽る
居酒屋「慕情」

気が
おかしくなりそう
分子一個なのに
生物の営みの
深遠さ



和田 今日子

右往左往の柄の先に
つややかな赤い実
ひとつひとつ
いとおしんで口へ
最後は三つ子のさくらんぼ

 

 

 

 

 

 
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