開催日
2005/01/22 2005/02/12 2005/03/12 2005/04/09 2005/05/14 2005/06/11
愛子
   

「あなたご飯です」
「うん、会いたい」
わが父母の
真面目でおかしな
一日が始まる

 

 

 



石田郁子

ビロードの輝きを放つ
冬の苔
コンクリートの隙間で
水分を得
朝日を得て

私の洋服の
ポケットからは
一年前の
ハンカチの他に
木の実も出てくる

厚かましいのではない
生きるために備わった
郭公の
托卵という
(さが)   一席

ふくよかとは
この花のためにある
ことばか
白木蓮の花の下には
母性が漂う

 

見て 見てーと
啼いている気がして
必死で
桜の緑陰に
斑鳩(いかる)の姿を探す

あっても
なくても
先延ばしの
口実になる
〆切日

裸木の
芽吹き始めた枝を
透かした空に
桜の霞を
重ねてみる

芯を潤す
水の
豊かさ
わずかの揺れで
目から溢れる

まるでポップコーン
陽ざしを集めて
ポン・・ポポポン
弾けだした
桜たち

補欠の君の
試合用ユニフォームに
泥の代わりに
滲むもの
そっと洗う

壊れてしまったものならば
蛍光塗料で色つけて
粉々にして
空へ
撒こう



川口晴絵

 

裸木の
向こうに
満天の

咲く  同点一席

 

 

雨に 打たれ
風に 吹かれ
陽に 照らされて
五月の森が
歓喜している

 



菊江 寛

近ごろ
快適なのは
純度百パーセントの
自分を目差して
生きているから  同点三席

今日は
どのへんから
笑えたの
首より下から
笑ったかい  同点一席

紐をさがして
闇をかき回す
照明は
リモコン式に
進化したのに

傷あと
いっぱいの
まな板に
御馳走しましょ
春の陽ざしを 同点二席

野の花は
摘むと
しおれてしまう
そんな目で
君を見詰めるだけ 一席

快方には
向かわない
知っていながら
見舞った後の
目が寒い



小林美智代

夫のノドを通るものを
さがして
師走の町を歩く
町のけんそうも
今に遠い

年賀状も書けぬまゝ
寒中見舞いも飛ばし

春のきざしが見える中
夫の病状が進む

心がさわぐ夜は
チョットお酒を
飲んでみよう
ま、いヽか
これ極意

花粉のせいか
夫の旅立ちのせいか
何気ない
春の風景が
すべてかすむ  一席

五月のひかりが
みどりの輝きが
連休のにぎわいが
今の私には
まぶしい

春がきたのに
種をまく人のいない
畑に立つ
風のざわめきに
夫の声を聞く  同点一席

小久保かね子
   

貴き吾子よ
行き先探り
いかに育てん
吾身の定め
プリンセスの苦悩

さくら待ち
繰り出す人出
五分咲き愛でて
広げる弁当
風ゆらり

サップグリーン
初々しき森の息
スケッチブック
一気に走る絵筆
五月は生まれるいのち

 

雪は
地上の汚れを
覆い隠してはくれるが
無くなったわけじゃない
解決したわけじゃない

評価されないから
「孤高」を
装っているだけ
本当は
「孤独」なのだ

子供の頃を
回想すると
その時の自分を
優しく抱きしめて
やりたくなる

もうこれが
最後かもしれない
と思いながら
今年もできた
母とのお花見

砂のような
言葉にも
豊饒な世界を
形成していた
ときがあった

時間と風は
確かに存在するのに
私の目には見えない
ただ過ぎ去っていく時に
感じられるだけ   同点三席



芹川廣信

相づちを
打ってくれない
留守電
頭を下げながら
ひとり言

空気のような
ものだった、と
妻を亡くした友
男のわがままが
くずれる時

 

今年も
行けるかなぁー
尾瀬の木道
今年の
体力測定だ

 

 

喬城奈緒海
   

堕ちた西武のカリスマよ
遥か関門海峡を
越えてやってきた
この苛立ちが伝わるか
この怒号が聞こえるか

薄明かりの
部屋に咲いた
私という桜
眺めるだけでは
満たさせない

そのまんまの
露出よりも
ミクロの隙で
楽しませるのが
得意なのよ 夏女

哀しいくらいに
いちずな
君を思わせる
紫陽花の
色彩(いろ)



なまい きなこ

見えない「思い」が
声に
言葉に
態度に出る
「思い」は見える  同点一席

ムカつく態度
自分勝手な言葉
他人の中に
見る
自分の姿

人類の祖先から
人はつながっている
一人一人が
人類の結晶
かけがえのない命

行き先も
速さも
方法も
自分で決める
自分の人生

失敗するたび
増える
自分への教訓
多すぎて
忘れる

時刻に正確な
電車
お陰で
毎朝
走る



福島重男
   

ひよどりが
戸袋に
巣をつくり
雨戸開けない
八十路がひとり

何か事情が
あるのだろう
手向ける花もなく
墓石に冷たい雨の
彼岸明け     同点二席

 

 
松本佳世
     

ハタハタとスカーフが
頬を撫でる
ろう梅の丘
しがらみは
遠くへかすむ

しだれ咲く桜の下
散り敷く花筏
千鳥ヶ淵に外人さんの
感嘆の声
ここにはデモはない

陣馬の山並は
白い霧
脳裡をよぎる
若き日の
思い出まさぐる



悠木すみれ

冬の
夜の静けさ
胸の
濁り水が
澄んでくる

あの頃の
父の言葉が
時を越えて
今ごろ
届いたりする  同点一席

僕は
僕がなにをしたいのか
わからないんだ
十七の息子の
淡い緑のため息 二席

花と戯れた
陽射しが
けだるく横たわる
春の
夜の底

真っ白な直角を
作り出す心地よさ
豆腐を
サイの目に切る
ちっぽけな快感

夕暮れの窓を
鏡に変えながら
電車は
夜へと
沈んで行く 同点一席

吉野比抄子

 

朱  紅 茜
歳月が
うつろわせるのか
小指の糸
という絆

ママとはぐれて
かなしくて
親切そうな人を
家につれて帰った
困った迷子ちゃん

 

 

 

吉村恒雄

人をあざむき
お金を奪う盗人の
舌を抜かない
閻魔様の
情けが憎い

カゼ薬
どうしてわかる
なおす場所
医師も語らぬ
薬の効き方


亦(又)に心
心が二つ
意味深長な
会意文字

桜の下で
孫に教える
さくらさくら
魅せる笑顔
夢の老境

早乙女が
心に宿る
万感を
託す言葉は
沈黙のキス

身を震わせて
生きて居るよと
伝える仕草
哀れみ募る
鯉の活き造り 同点三席



れっどようこ

ふくらみを
横に逸らして
餅は
わが道を作った
網の熱さに耐えながら  同点一席

マイナス
三十五度の
上空気温
夜具を透して
鳩尾にしのびこむ

核心に
触れられず
周辺を撫でられている
もどかしさ
背中の虫さされ 三席

木の芽起しが
ささやく
「春ですよ」
大樹は動じず
ウィーッ飲み過ぎた

 

 



和田 今日子
         

人間は多角立方体
君のそのひとつの角と
僕のどれかの角が
溶け合えば
おうっと固い握手

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