2004/04/24
2004/05/22
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石田郁子

三峰山で
友らが見た
まさかの
幽玄
雪 月 桜

いつもにこやかに
教会の花の世話をしている
老婦人は
きっとたくさんの
悲しみを知っている人

自分のこれからを
こんなふうに生きたいと
広げてしまった
大風呂敷に
少し慌てている  二席(同点)

自己主張の強い白髪を
どんなに
ねじ伏せてみたところで
いずれ白に陵駕される
黒の宿命       二席(同点)

友の画集が送られて来た
本人の残暑見舞いと
八五歳の友の訃報が挟まって
友よ
安らかに眠れ

 

持ち主を離れた
鯉幟たち
託された愛を
ふうわりと降らせながら
川に橋を架ける  二席(同点

「美味そう」じゃない
「美味い」のだ
でも
思わずニヤリ
仲直りの合図  

飾りのふりした
白紙の短冊
書けない願い
飲み込んで
ひらりとゆれる  一席

君から零れる
言葉は
私を連れて
時空を超える
船になる



菊江 寛

ふっくらふっくら
萌ぎ色の
山肌は
ひと雨ごとに
かゆいよ

スカートの
軽やかに
ゆれる季節
腰の下にばかり
目がいきたがる

栗の花
たっぷりたっぷり
台風の
重い空なのに
まあ喜ぶこと

両腕のシミが
豹柄になってきた
炎天下の
チラシ配りも
仕事のひとつ  二席(同点)

ふるさとの
夜空は
まだ修理前
蒼いシートに
無数の穴がある 二席(同点)




小久保かね子

虹の下
行ってみたい
下は霧のようかな
そこで立ちたい
夢の中

あざみの花可憐
やさしく手折れ
棘のするどさ
手をいたわりて
野に咲く花と知る

発車直後の
バス停に
日傘さして
次の発車待とう
老いの昼

炎天下
汗とび散る
よさこい踊り
元気もらって
観衆の中

取り組んで
死闘の技
テレビ放映に
手に肩にこもる力
背に負う日の丸

天国から地獄に
転落した人がいる
「ざあまあみろ!」
とは思えない
私もそんな年になった

見たことを
感じたことを
思い描いたことを
いま考えていることを
五行で表してみる

お金に迷い
仕事にも迷う
進む道に迷い
自分にさえ迷う
そんな迷子たちの国  一席

「人間は必ずいつかは死ぬ」
とは判っていても
同期生の死は
やはり衝撃
(次は誰だ?!)

自分を解らせたい
と生きてきた
これからは
自分を知るために
生きていく    一席



小林美智代

パチンパチンと
つめを切る音が
妙に心にしみる
一日くが無事にと
祈る日々の中で  二席

一日は姉妹で
一日は夫と子を訪ね
一日は友と会う
いのち輝やく
私のゴールデンウイーク

きびしい告知を
受ける日は
あたたかい日がいい
太陽の光にささえられ
家にかえりたい  二席(同点)

なぜか
人恋しい夕べ
電話をかけまくる
……誰もいない
風もないこのひととき

何が起っても
たいしたことないと
すべてをのみこんで
暑くて長い
夏が終る   二席(同点)



芹川廣信

たった、すこしでも
老人の慰めになれば
プレゼントしよう
未完成な
走馬灯

「想い出はすべて霧の中である」
つたない五行歌に
心に灯をともされたと
娘を亡くした
老友の返事

今日過ぎれば
明日があるさ
いろんな事も人生さ
だから
さよならは云わないよ

 

 



なまい きなこ

言葉にすると
心がみえる
人に伝わる
決意が固まる
自分がわかる 一席(同点)

人は、みな違う
考えも感じ方も
だから
心が通じた時
感動が生まれる

自然と
旧姓で呼ぶ
すぐに
時が戻る
昔の友

グサッときた
その言葉
カッとする自分
それを見つめる
もう1人の自分

はがきで出した
暑中見舞い
メールで受ける返信
多くの顔文字
ちょっと難解



悠木すみれ

静まるのを
待つしかない
反抗期の
息子のような
春嵐     一席(同点)

はらはらしながら
聞いている
鶯の初鳴きのような
新米駅員さんの
アナウンス   一席

いくつになっても
列車の旅は
缶入りの
みかんジュースの
匂い

期末テストに付き合って
ココアをすする
午前二時
因数分解を
ゲームのように解いてみる

さよならして
次に会うまでの時間
胸に
待ての姿勢の
犬を飼う

吉川敬子
     

自分史さながらの
昆虫標本を前に
四才と弾む
夫の声
夏雲に聴く

 

吉村恒雄

体弾ませ
声張り上げ
真似て応援
雰囲気に酔う
一日ファン

バラが咲く
石楠花も咲く
木も草も
休まず変化
日々の喜び

天城路は
清かな緑
山笑う
峠下れば
膝笑う  二席(同点) 

向井潤吉の
風景画見る
長閑な自然
藁葺き民家
郷愁いだく

初江と民子
青春文学の
ヒロイン二人
人生の
明暗なぞらえる



れっどようこ

木樹は
わかばの域を越えた
手がけた
パロデーは
近付きながら亦遠のく

朝の流しの
ステンレス
おびただしい
潮の跡が物語る
あさりの本音

花に触れ
水を弾いて
チャイルドの部分で遊ぶ
はつなつの
小川のほとり

天にも地にも
の 勢いに
挙げる左手
朝青龍
モンゴル魂の雄叫び

迷路めいた
雑居ビル
脳の中の見取り図に
スペース狭く
五行歌部



和田 今日子

いっしょにね
このひと言で
しぼんでいた心が
ふくらんだ
ありがとう  二席(同点)

本屋三軒
歩き廻る
何を探してるの
心の虚の空間を
みたしてくれるものを

夫婦で働いて五十年
富も名誉も手にいれた
いま 老々介護?
古いカラを破って
豊かな生活を選んで下さい