飯能五行歌会2003年4月〜7月の作品       飯能五行歌会HOMEへ
 
飯能五行歌会2003年4月〜7月の作品       飯能五行歌会HOMEへ
2003/04/26
2003/05/24
2003/06/28
2003/07/26


石田郁子

学芸員たちの
命だった
メソポタミヤ文明の
遺跡の数々
盗まれ 破壊され

 

四十五年間
荒れ地に咲いた
サフランの花が  
閉じた
この世の仕事を終えて
      三席
二酸化炭素と
失業者の両方
吸収できるぞ
がんばれ
山の産業
国の長の
言葉の先には
誇りと思える
祖国が
見えない


 
諍(いさか)いの朝
窓辺を這う
ジャスミン
黄色の首伸ばし
覗きみる
蝿叩きで
バシッ
飛び跳ねる黒点
老父を騙した
西瓜のタネ
主人(あるじ)より
長生きしている
陶磁器
何を語るの
時代(とき)を肴(さかな)に
        一席


門田りよ子
「母」という字が
 妙に
 目につく
 日々
 深く刻まれていく 
スマイル
スマイルと
言い聞かせながら
自分の中へ
元気を注入
      二席


川口晴絵
私との暮らし 倖せだった?
と 空の人に問う
倖せだったに決まってる
と 自分を納得させて
また歩き出す
        二席
どこからか出てきて
又、くもの子を散らすように
消えて行った
神出鬼没の
軍事評論家
       三席
日傘の中の 涼
着物姿で
貴婦人気分
束の間の
夏の入口
      二席
釣をする人
それを見る人
殺伐とした世相の中で
静止した
空間
      三席




川島澄子
 
ウェットスーツ紳士の
愛車は自転車
サーフボードを
専用席にのせて
海に発進
      
 


菊江 寛
デュエットしましょ
女がしなだれる
子育ては
していないのか
二の腕が細い
竹のひと山
造成され
風走る中に
寺墓地が
残されただけ 
    一席
あじさいの
花の川
山畑沿いに
民家までの
ながれ
娘の作った
ぐいのみ
添え書きを
守れずに
多多味わう


幸子
娘も
卒業記念樹も
花が咲いたら
一人で育った
顔しちゃって
   


小久保 達

HP個人五行歌集
『五行の語感』
きょうの出会いを
覚えていよう
いつか
懐かしむ日に
なりそうだ 
五十歳を
共に過ぎても
いまだに
春夏秋冬
一つの布団
視線と
香りの
届く範囲が
恋の
発生エリア
慌てて乗った
電車は
ノンストップの
方向違い
しかも最終



小林美智代
風に舞う
花吹雪の中を
自分に言い聞かせるように
胸をはって歩く
これでよかったんだ
いたみと共に
形をかえていく
私の手足
五体満足に生んでもらったのにと  
心がうずく
ローン最後の
引おとし
通帳の中の
私の足跡を
みつめる
     一席
収支決算
帖尻を合わそうと
力(りき)んだ日々
計算ご無用
人の目ご無用


芹川廣信
モノクロの世界しか
見えぬ友
この色彩も
それなりに
楽しんでいる
居所も判らない
友人の家
ペタペタと
破産宣告の
紙がヒラヒラ
心臓病棟の
七夕かざり
「俺の病気早く直せ」 
と書いてみる
梅雨時のけだるい朝
梅雨のあいま
旧友を
訪ねまわる
「舞踏会の手帖」だね
ふと、にが笑い


なまい きなこ
 
都会から田舎への
農業体験が
流行る
人は土に学び
自然へ帰る
電車内での化粧
コンビニ前でのしゃがみこみ
若者が変
それは大人が変だから
それがわかる自分に安心
班づくり
誰かと付いたり
離れたり
急に吹き出す
人間模様


福島重男
二才一〇ヶ月の
孫が逝く
桜が満開
綺麗に見えない
あの笑顔が邪魔をして
        一席
やたらと
不満が多くなる
政治に世の中
若ものに
不文律の大革命
  
  


森本いくこ
   
棚田を
風がゆく
早苗が
雲が
水鏡に揺れ騒ぐ
    二席


悠木すみれ
聳(そび)え立つような父に
勝ちたかった日々を思う
子に
負けてやれぬ
自分が
座ってみては
部屋を見回し
思案が続く
家庭訪問の
座布団の位置
   一席 
青から
紫へ
山間の斜面は
あじさいが彩る
寒色のグラデーション
九つで
母を亡くした父は
遠足の弁当が
いちばん辛かったと
七十三の今でも


れっどようこ
色が変わるほど
誓い合った指なのに
約束なんて
もろいもの
消えた痣の跡が呟く
ふくらめた鼻孔は
胸を張らせ
腹の底までとどける
山から送られてくる
新緑の酸素入り空気を
わたし
ここよ
雨に濡れる雑草の中から
ためらい勝ちなおしろいの花
恋はまだ始まっていない


和田三代子
元社長秘書
マニキュアの指が美しい
喜の寿という
膝に
肌色の湿布が痛ましい